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2010年12月16日木曜日

東京工業大学「生命の科学と社会」講座で松下がレクチャー

いのへるで、レクチャーいただいた上田紀行先生@東工大が企画・運営している講義の一部です。

http://tinyurl.com/23ax5lz

<以下貼り付け>

○講義概要
総合科目は、従来の学問分野の区分けを超えて、異なる文系同士、あるいは文系と理工系とが融合またはクロス・オーバーするような学際的・広域的テーマについて、複数の教員が共同で開く科目である。各クラスの授業担当教員、テーマ、内容については、「教授細目(シラバス)を参照されたい。

○講義の目的
現代の先端的な生命科学の研究を紹介し、これらの科学が生命操作や自然環境などに関する現代社会の問題とどのようなかかわりをもっているかという点をわかりやすく解説する講義です。前半は、生命理工学部の教員が一回づつ講義し、それに対する質疑応答が中心になります。後半は、生命科学と社会との関わりについて、討論を中心に授業を進めます。

<以上貼り付け>

以上のようなアウトラインですが、松下が担当するのは:

①「生老病死の苦とヘルスケア」
②「ケアリングのイノベーション」

物質系のイノベーションそして、医療サービス・イノベーションが、医療制度を媒介にして社会に伝搬・普及してゆく過程で現れる諸現象を、生命倫理、医療マネジメントの視点から議論します。

Quality of Life(QOL)のlifeをどうとらえるのかによって、アプローチが変わってきます。

生命としてのlife
生活としてのlife
人生としてのlife
いのちとしてのlife

生命科学知の発明(インベンション)は人間(患者)のQOL向上に直結するのだろうか?
イノベーションを普及させる場としての医療機関は効果的に機能しているのだろうか?
現代の健康・医療サービスは人間(患者)のニーズに応えているのだろうか?

このような問いをベースに議論します。

2010年11月16日火曜日

加藤眞三先生『患者学~患者中心の医療を実現させるために~』

講演タイトル:
加藤眞三先生(慶応義塾大学医療看護学部教授)
『患者学~患者中心の医療を実現させるために~』

日時・場所:
2010年12月18日(土) 18:00~20:00
於:田町キャンパス・イノベーション・センター4階 405教室 (25人)
講演会のあと講師を囲んだざっくばらんな懇親会があります。(会費制です。おおむね2500円位です。)

申し込みはコチラからです。

主催:
◎医療サービスイノベーション研究フォーラム

モデレータ:
松下博宣(東京農工大学大学院技術経営研究科)

「今回は、上田紀行先生のバトンを継いで加藤眞三先生の登場です。「生きる意味」を臨床現場で患者さんと深く接しつつ深く考察、実践していらっしゃる方です。医療サービスの中心に患者を置くと、いったいどうなるのか?医療サービスイノベーションを構想し、実践する視点を共有しましょう!」

(1)トークのテーマ
「患者学~患者中心の医療を実現させるために~」

(2)テークの概要
お話頂く加藤眞三先生は、1980年に医学部を卒業して以来、大学病院、都立病院等で消化器内科の臨床に従事し、肝臓病、特にアルコール性肝障害を研究テーマとされてきました。その間に、大学病院等における現代の医療に様々な点から問題を感じ、「患者中心の医療とは何か」を悩み考えられてきました。そして、慢性病やがん患者に対する、患者教育や情報提供、患者への情報リテラシー教育、そしてスピリチュアルケアに関心を抱かれています。

1992年、都立広尾病院にて肝臓病患者のための情報提供の場として肝臓病教室を立ち上げ、18年が経っています。それを全国の医療機関に普及させるために「肝臓病教室のすすめ」(メディカルレビュー社)を上梓し、100を超える施設から350人余りの見学者を迎え入れています。現在、全国で150を超える医療施設で肝臓病教室が開催されるにいたっています。

一方、患者にも自ら積極的に医療に参加し、患者と医療者の協働関係を作り上げることを訴えるために、「患者の生き方;よりよい医療と人生のための患者学」(春秋社)を上梓されいます。

2005年に慶應大学の医学部より看護医療学部へ異動となり、慢性病態学と終末期病態学の担当となりました。看護医療学部は看護と医療ケアを教育・研究するために作られた新しい学部であり、今までの専門分化した臓器別の医学でなく、医療を慢性期、終末期という観点から見直す機会となりました。

そして先生は「患者のための医療情報リテラシー」というHP(MELIT)を立ち上げました。患者会のネットワークにも積極的に参加し、患者が自らの病気をどうとらえているかを記載した教科書づくりに加わっています。それを今までの客観的な科学に基づく教科書ではなく、患者による主観的病態学の教科書であると位置づけていらっしゃいます。

また、現在、慢性病患者におけるスピリチュアルケアの一つの形として、患者同士のグループワークをシステム化することを試みていらっしゃいます。

(3)加藤眞三(かとう しんぞう)先生のプロフィール

昭和55年8月
慶應義塾大学医学部卒業
昭和56年4月
慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程入学(内科学専攻)
昭和60年7月  医学博士(慶應義塾大学)の学位取得
昭和60年 7月
米国ニューヨーク市立大学マウントサイナイ医学部内科
Research fellow, 兼ブロンクス退役軍人 (VA) 病院内科 Resident in
Liver Disease and Nutrition(昭和63年11月まで)
平成 2年12月
都立広尾病院内科医長, 内視鏡科科長 (平成6年7月まで)
平成 6年 10月
慶應義塾大学 専任講師 (医学部内科学)(平成17年3月まで)
平成17年4月 慶應義塾大学看護医療学部教授 (慢性期病態学、終末期病態学)
現在に至る。

●所属学会および研究会関係活動
(国内関係)
日本内科学会(認定医)、日本消化器病学会(学会評議員、指導医、専門医)、日本肝臓
学会(東部会評議員、指導医、認定医)、日本消化器内視鏡学会、日本アルコール薬物医
学会(理事、評議員)、日本成人病(生活習慣病)学会(評議員)、日本微小循環学会、
アルコール医学生物学研究会、こころとからだの痛み研究会(世話人)、日本保健医療行
動科学会、東京アルコール臨床懇話会(幹事)、日本医学教育学会、
(国際関係)
International Society for Biomedical Research on Alcoholism (Member)
Research Society on Alcoholism (USA) (Member)

●主な研究課題
アルコール性肝障害および薬剤性肝障害の発生機序、エタノール代謝
患者教育、肝臓病と栄養、肝臓病と運動、スピリチュアルケア

●主な書著
「肝臓病教室のすすめ」 メディカルレビュー社 2002年
「肝臓病生活指導テキスト」 南江堂  2004年
「患者の生き方」 春秋社 2004年
「患者と作る医学の教科書」 日総研 2009年
「今日の治療薬」 2010年 南江堂

●ホームページ
患者のための医療情報リテラシー(MELIT)
http://melit.jp/

2010年9月28日火曜日

上田紀行先生:「生きる意味」を問いながら「肩の荷」をおろして生きる

講演タイトル:
「生きる意味」を問いながら「肩の荷」をおろして生きる

日時・場所:
2010年10月30日(土) 18:00~20:00
於:田町キャンパス・イノベーション・センター4階 405教室 (30人)

主催:

今回は、趣旨に鑑み「リベラルアーツ教育によるグローバルリーダー育成フォーラム」 との共催となります。
◎医療サービスイノベーション研究フォーラム
◎リベラルアーツ教育によるグローバルリーダー育成フォーラム

申し込みはコチラからです。

モデレータ:
松下博宣(東京農工大学大学院技術経営研究科教授)

パート1
上田紀行先生講演
パート2
上田紀行+参加者での語り合い

その後、講師を囲んだざっくばらんでオープンな雰囲気の懇親会あり(会費制)

概要
少子高齢化が加速し、年間自殺3万人超の常態化など、今や、ひずみだらけの健康・医療システムは社会にとっても大きな「肩の荷」となりつつあります。また生老病死苦を背負って生きる私たち個々人にとっても「肩の荷」の対処の仕方は切実な課題です。

私たちは、どのように生きていったらよいのか?そしてどのような死を迎えたらよいのか?もしかしたら望ましい死に方が見えてきたら、生き方も見えてくるかもしれません・・・。

とほうもなく重い問題ですが、前向きに考えて明るく語り合いましょう。

そこで今回は、『生きる意味』や『「肩の荷」をおろして生きる』の著者である上田紀行先生をお招きし、これらの本や上田先生の社会へのまなざしをベースにしたざっくばらんな寺子屋トークセッションを開催いたします。狭義の医療にとらわれず、宗教、社会学、文化人類学を含むリベラルアーツの文脈でも示唆に富んだ議論を共有したいと思います。

上田紀行プロフィール:
文化人類学者。 博士(医学)
東京工業大学大学院准教授 (社会理工学研究科、価値システム専攻)

1958年東京生まれ。東京大学大学院博士課程修了。
愛媛大学助教授(93~96年)を経て、96年4月より現職。
国際日本文化センター助教授(94~97年)、東京大学助教授(2003~2005年)を併任。

2005年には渡米し、スタンフォード大学仏教学研究所フェローとして、「今の仏教は現代的問いに答え得るか」と題した講義(全20回)を行う。

86年よりスリランカで「悪魔祓い」のフィールドワークを行い、その後「癒し」の観点を最も早くから提示し、現代社会の諸問題にもテレビ、新聞等で提言を行う。

98年4月より3年間、毎日新聞で論壇時評を担当し、2000年1月から2年間は読売新聞書評委員、2001年4月より1年間NHK衛星放送「週刊ブックレビュー」司会者もつとめるほか、「朝まで生テレビ」「NHKスペシャル」等でも積極的に発言を行う。

近年は日本仏教の再生に向けての運動に取り組み、2003年より「仏教ルネッサンス塾」塾長をつとめ、宗派を超えた若手僧侶のディスカッションの場である「ボーズ・ビー・アンビシャス」のアドバイザーでもある。2004年に出版された『がんばれ仏教!』(NHKブックス)では、時代の苦悩に向かい合う寺や僧侶達を紹介し、日本仏教の未来図を提示して、大きな反響を呼んだ。

学内においては、講義にディスカッションやワークショップ形式を取り入れるなどの試みを行っおり、学生による授業評価が全学1200人の教員中第1位となり、「東工大教育賞・最優秀賞」(ベスト・ティーチャー・アワード)を学長より授与された。また著書『生きる意味』(岩波新書)は、2006年全国大学入試において40大学以上で取り上げられ、出題率第一位の著作となる。

***

2010年6月12日土曜日

食生活支援というクラスターアプローチによるコミュニティケア戦略の実現に向けて~ICTの活用によるソーシャル・キャピタルの醸成~

7月12日に下記の要領で寺子屋セミナーを開きます。今回は、フォーラム会員の永長周一郎氏による話題提供です。

セミナー詳細と申し込みはこちらからです。

 全国で歯科医院は68,000施設あり、コンビニの店数を凌駕しています。これらの歯科医院を、地域社会に埋め込まれたソーシャル・キャピタルと見なせば、歯科医院を他のリソースと機動的に繋いで活用する行き方が「持続可能な福祉社会」では求められることになります。そのためには、従来の歯科完結型の治療ではなく、医科歯科連携を機軸にした、多職種連携、ネットワーク化へ新化させるヘルスケアサービス・イノベーションが必要となります。

 そこで、今回は、口腔ケア、評価も含む口腔リハビリの実際とともに、ICT(Information and Communication Technology)の活用による、食生活支援というクラスターアプローチによるコミュニティケア戦略についてお話頂きます。

<アウトライン>

 時代、世相を斬るものといえば、新聞、テレビ、最近は、ソーシャルメディアである、ブログやTwitterがあります。変わったところでは、中学受験の出題動向があり、国語では、「食」の見直しをテーマにした文章が目立ち、そこから派生した家族の絆、人間としてのあるべき姿、モラル、コミュニケーションにまで及ぶ、「食」に関するメッセージ性の高いものが出題されているそうです。

 わたしたちが、健やかな生活をイメージしたとき、そこには温かな食事とともに豊かなコミュニケーションが待っているのではないでしょうか。医食同源といわれるとおり、口から食べることは健康長寿の源ですが、一方で「人はパンのみに生きるにあらず」であり、医学的な栄養管理の側面とともに、生活支援としての食支援が考慮されるべきでしょう。

 日本は、先進諸国に先駆けて、急速に超高齢社会を迎えようとしていますが、高齢者とご家族、そして地域全体の「食コミュニケーション」「食生活」を支援する社会関係資本、ソーシャル・キャピタルは少ないため、複数機関、多職種による連携・協働が不可欠とされており、歯科の役割もクローズアップされています。旧来型の歯科治療では、虫歯や入れ歯という印象が強いでしょうが、本来のミッションは「口から美味しく食べて、健やかに過ごす」ことにあり、現在、口腔リハビリとしての「口腔ケア」「摂食・嚥下リハビリテーション」が拡充されつつあります。要介護高齢者の誤嚥性肺炎予防としての口腔ケアが着目され、在宅からの再入院を防ぐことは、費用対効果、医療経済の視点からも重要です。

 地域コミュニティに網羅された歯科医院は貴重な社会資源であり、ソーシャル・キャピタルとしての活用が「持続可能な福祉社会」では求められています。そのためには、従来の歯科完結型の治療ではなく、医科歯科連携を機軸にした、多職種連携、ネットワーク型のヘルスケアサービスが必要となります。そこで、今回は、口腔ケア、評価も含む口腔リハビリの実際とともに、ICT(Information and Communication Technology)の活用による、食生活支援というクラスターアプローチによるコミュニティケア戦略をお話したいと思います。

参考文献:
1.永長周一郎、角 保徳、足立了平:歯科医師会との連携-歯科医師の立場から、在宅医療-午後から地域へ(日本医師会雑誌第139巻・特別号1)、pp66-67、日本医師会、2010.
2.永長周一郎、品川 隆:特集実践!在宅医療 多職種連携における歯科医師、治療、91(5):1547-1551、2009.文献リンク
3.永長周一郎、前田泉:特集食コミュニケーションにおける歯科の役割 地域に密着した歯科医の重要性、GP-net、55(6):11-18、2008.文献リンク
  
<日時と場所>

○2010年7月12日 19:00~20:00 その後Q&A、ディスカッション約20分
○金沢工業大学工学研究科虎ノ門大学院 アクセスはこちら
○セミナー終了後、懇親会あり(会費制)

<演者プロフィール>

永長周一郎(東京都リハビリテーション病院診療部歯科、日本大学医学部兼任講師)

1987年日本大学松戸歯学部卒業後、東京大学医学部附属病院分院歯科口腔外科研修医、医員、東京大学保健センター歯科、東芝病院、東京大学医学部文部技官教務職員として急性期医療に従事。その後、大宮共立病院歯科口腔外科科長、大生病院歯科口腔外科副医長として療養型医療に従事。1999年より現職となり回復期リハビリ医療に従事。2008年筑波大学大学院教育研究科修士課程リハビリテーションコース修了。

博士(歯学)
修士(リハビリテーション)
日本老年歯科医学会認定医・指導医
日本障害者歯科学会認定医
日本リハビリテーション医学会会員
介護支援専門員

一般社団法人全国在宅歯科医療・口腔ケア連絡会 理事(IT・コミュニケーション局)
日本病院歯科口腔外科協議会 理事(IT・情報)
日本有病者歯科医療学会 評議員・広報委員・会則検討委員

セミナー詳細と申し込みはこちらからです。

2010年6月2日水曜日

"How and who will care for the aging and dying population?"

Temple University(麻布) のHealthy Healthcare - Lecture Seriesにてフォーラム世話人、松下博宣が"How and who will care for the aging and dying population?"というテーマで講演します。ソーシャル・キャピタルを活性化させるためのサービス・イノベーションに焦点を置きます。

主催者からのリクエストにより英語での講演となります。詳細と申し込みはこちら

<以下貼り付け>

Date: Friday, June 18th, 2010
Time: 7:00 p.m. door open (7:30 p.m. start)

Outline:

As Japan is faced with confronting an aging and dying society in advance of the rest of the world, systemic problems have become intense and diverse. In his presentation addressing “How and who will care for the aging and dying population? Professor Matsushita will discuss the problems associated with the underlying phenomena of Japanese population, death, healthcare delivery systems, and health service organization primarily from his own service innovation perspective.

Although invention geared towards artifacts including pharmaceutical and medical equipment utilizing cutting-edge medical technology seems attractive, is materialistic innovation perfectly effective and affordable for those who require care? Should the significant part of the national budget go to the sector that leads materialistic innovation? Who decides the application of newly developed medical technology and how? Does the principle of market competition work well in health care? In answering those questions, he will provide the audience with insights to use and empower “social capital” in innovating health services in local community.

<以上貼り付け>

2010年6月1日火曜日

論説「混合診療は原則解禁すべき?」

本フォーラムメンバーの木村憲洋さん(高崎健康福祉大学准教授)の論説「混合診療は原則解禁すべき?」が日経ビジネスオンラインに掲載されています。


医療サービスイノベーションの立場からも『混合診療』には大きな関心を寄せています。患者利益、公的・民間医療保険医療機関、行政はもちろんのこと、新規性の強い新規薬剤、医療機器、先端医療の開発フェーズを含める医療のイノベーション生態全般のステークホルダに対する影響が大きいからです。

さて木村さんは「いわゆる『混合診療』問題に係る基本的合意」により創設された、先述の保険外併用療養費制度によって、すでに一部は混合診療が解禁されているという事実認識をベースに論を展開されています。

<以下貼り付け>

 ただ、先で触れた混合診療を巡る訴訟において、一審の東京地裁では、「保険外併用療養費制度上の給付対象が、保険給付に値する組み合わせを網羅的に拾い上げたものではないことから、それ以外は保険給付の対象にならないとの解釈は成り立たない」と断じています。一方、二審の東京高裁では国が逆転勝訴したわけですが、最高裁が今後、どのような判断を下すかが注目されます。

<以上貼り付け>

まさに最高裁の判決が注目されます。

最後のほうで「混合診療」について読者に賛否を問うています。双方向性を活かしたオピニオン集約型の論説はネットならではです。

2010年5月15日土曜日

サービス・サイエンス入門と基本用語の定義

今日はサービス・サイエンスについてちょっとまとめてみます。サービス・サイエンス(service science)とは主にコンピュータ産業において提示されてきた概念です。パルミサーノレポートにおいては多分野研究のフロンティアの再活性化として「コンピュータ科学、オペレーションリサーチ、産業工学、数学、マネジメント科学、デザイン科学、社会科学、法科学といった分野が混合しビジネス・技術専門性の交わりにおける活動全体を変容させイノベーションをもたらすものである」と概念づけされています。

ちなみに、パルミサーノレポート(Innovate America: Thriving in a World of Challenge and Change - National Innovation Initiative Interim Report - National Innovation Initiative Report)とは、2004年12月に競争力評議会(Council on Competitiveness)により発表された報告書のことです。正式名称は「イノベート アメリカ: チャレンジとチェンジの世界における繁栄-全米イノベーションイニシアチブ報告書(Innovate America: Thriving in a World of Challenge and Change - National Innovation Initiative Interim Report - National Innovation Initiative Report)」です。全米イノベーションイニシアチブ共同議長であるSamuel J. Palmisano IBM社会長・CEOの名を取りパルミサーノ・レポートと呼ばれています。

このような背景のなかで、IBM社がこの動きに関与しています。去年、IBM社でサービス・サイエンスを主導しているJim Sporer氏から親しくお話を伺い議論する機会がありました。そのなかで、サービスに関するいくつかの洞察に満ちた概念(モノゴトに対する見方)を共有させていただきました。

                    ***

■IHIP特性
サービスの持つ、通常の有形製品と異なる特性として、形がない(無形性:intangibility)。品質を標準化することが難しい(異質性:heterogeneity)。生産と消費が同時発生する(不可分性:inseparatability)。保存ができない(消滅性:perishability)といった特性があるとする仮説的な見方。

Zeithaml, Parasuraman, and Berry (1985) は1975-83にかけて提出された33人の著者による46の論文・著作を分析して、これらのサービスの特性を抽出した。初めてこれら4つのサービスの特性を論じたのはSasser, Olson, and Wyckoff (1978)である。しかしながら、イェール大学のChristopher Lovelockは、IHIP仮説の起源は経済学にあるとして、反駁している。すなわち消滅性はAdam Smith (1776)によって指摘された。無形性と不可分性はJean-Baptiste Say (1803)によって論じられ異質性はJoan Robinson (1932)によって考究されている。(注:一部の教科書にはIHIP特性があたかも公理のような書き方をしていますが、それは正しくないですね)

■ISPARモデル(interact-Service-Propose-Agree-Realize Model)
ISPARモデル(Spohrer,Vargo,Maglio,Caswell 2008)によると、サービスの成果は10に分類される。(1)価値が実現される。(2)価値提案が理解されない。(3)価値提案が合意されない。(4)価値は実現されないが紛争はおこならい。(5)価値創造に関する紛争が関係者すべて納得する形で解決される。(6)価値創造に関する紛争が関係者すべてが納得しない形で解決される。(7)やりとりがもはやサービスではなく歓迎されない。(8)歓迎されない非サービスが犯罪ではない。(9)歓迎されない非サービスが犯罪であり解決される。(10)歓迎されない非サービスが犯罪であり解決されない。

■バリュー・プロポジション(価値提案:value proposition)
バリュー・プロポジションとは、効果と問題解決が一体化されたもの。サービスのユーザにとっての価値です。製品やサービスのメリット、自社の存在価値や独自性を顧客に伝え、その価値を高めること。サービス共創という文脈ではサービス提供者とユーザ、そして製品とサービスを共時的に包含するものである。バリュー・プロポジションを検討する際には、顧客の立場、目線に立って自らが提供する製品、サービスをデザインすることが必要。

■サービス・システム
人々、技術、組織、共有情報などの諸資源のダイナミックな構成。それによってリスク負担と価値創造をバランスさせ、サービスを創造し提供する。サービス・システムは複雑かつ適合的なシステムである。内部に小さなサービス・システムを内包すると同時に、より大きなシステムに含摂される「システムのシステム」という性格をあわせ持つ。

■サービス・デザイン
新しいサービス・システムやサービス活動を創造するためにデザイン手法やツールを応用すること。

■サービス工学
新しいサービスを開発しサービス・システムを向上させるために技術、方法、用具を応用すること。

■サービス・イノベーション
技術イノベーション、ビジネスモデルイノベーション、社会組織イノベーション、需要イノベーションを結合、融合させること。それによって、現存するサービス・システムに改善を加えたり(漸次的イノベーション)、新しい価値命題を創造したり、新規性の強いサービス・システムを創造すること(ラディカル・イノベーション)を志向する。

■サービス・マネジメント
サービス・システムやサービス活動に対して、マネジメント手法、ツールを応用し拡張すること。

以下はJim Sporer氏によるサービス・サイエンスに関わる命題設定です。(一部アツいです)

■サービスは交換の基礎を成す(service is fundamental basis of exchange)
交換とはやりとりである。人々には特定のスキルに特化してゆこうとする傾向がある。専門性を深めるほどすべてを一人でこなすことはできなくなり、交換が必要になってくる。社会は専門化すればするほど交換するようになり、相互依存性が増す。

■経済はどのようなものであれ、サービス経済である(All ecnomies are service economies)
狩猟採集経済、農業経済、工業経済、サービス経済であれ、すべての経済は人間が知識を生み出してそれらを様々な便益を生み出すために利用する、つまり「サービス」に拠って立つ。農業経済から工業経済へと転換しつつあった時代に経済学が登場してきたので、必然的にGood-dominat Logicが優位に立ってきた。サービス対サービスのような交換様式は間接的な交換、モノ、職務、貨幣の陰に隠れていたのである。論者によっては現代を、知識経済とか情報経済と呼ぶが、すべての経済には、サービス的な側面、知識的な側面、そして情報的な側面があるのである。

■顧客は常に価値を共創する(The customer is always a co-creator of value)
顧客はサービスシステムの重要な構成要素である。交換されるモノゴトが専門性を帯びるにしたがい、サービスシステムは他のサービスシステムに依存するようになる。したがって、どのサービスシステムもサービスシステムの顧客であり提供者である。顧客と提供者は価値を共創する。卓越したサービスは提供者の行動と顧客の行動の双方を重視し、サービスのありかたに新機軸をもたらしている。

■企業は顧客に価値を提供することはできない。企業が提供できるものは「バリュー・プロポジション」だけである。(The enterprise cannot deliver value, but only offer value propositions)

価値を共創するふるまい、やりとりのの核心に存在するのがバリュー・プロポジションである。顧客と提供者は共に存在することによってのみ価値を共創するのである。学校は学生や生徒に価値を提供はしない。バリュー・プロポジションを提供するのである。

■価値は常に受益者によってユニークに現象学的に決定される(value is always uniquely and phenomenologically determined by the beneficiary)

価値は意志決定以上のものである。価値の決定は、特定の文脈の中であり、過去起こったことに依存し、そして特殊なことがらである。提供者はなにがしかを顧客から学ぶものである。たとえば他者の価値判断をエラーなく正確に予測できるサービスシステムがあるとしよう。つぎに他者の価値判断をコントロールできるサービスシステムがあるとしよう。予測とコントロールをすることによって卓越したバリュー・プロポジションを仕立て上げることに近づくのである(Ariely 2008)。

■知識と社会(Knowledge and Society)
知識を蓄積するために社会は存在する。蓄積された知識は個人の自由を拡張し便益を増すことになる。

■自由と価値(Freedom and Value)
個人の自由は、価値を創造するためのやりとりを増やすことによって社会の発展に寄与する。逆に、個人から自由を奪うことは価値を創造するためのやりとりの潜在的な機会を消滅させることによって社会の発展を阻害する。

***

このようにサービス・サイエンスには、価値中立的なサイエンスの側面もあれば、価値判断に立脚するWorld View的な側面もあります。医療サービスにもこれらの二面があるので、サービス・サイエンス的アプローチは、実は医療サービスを考究するさいには示唆に富みますね。

2010年4月15日木曜日

永長周一郎

 会員の永長周一郎です。
 ながおさと読みますので、よろしくお願いします。

 フォーラム世話人の松下博宣先生とは、東京工業大学の公開講座「Change the World ―日本の社会起業家が語る社会イノベーション」がご縁となり、その後、田町CIC界隈で、フォーマル、インフォーマルにお世話になっております。

 現在、東京都リハビリテーション病院に歯科医師として勤務し、足掛け12年となりました。今春より、日本大学医学部兼任講師も務めています。専門は、高齢者歯科医療、障害者歯科医療です。特に、高齢者の口腔ケア、摂食・嚥下リハビリテーションを守備範囲としています。最近は、急速に高齢化が進む都市部の地域福祉ネットワーク、コミュニティケアとしての「食コミュニケーション」に関心を持っています。詳細は、小文「食コミュニケーションにおける歯科の役割」を、ご笑覧頂けましたら幸いです。

 歯学部卒業後、文京区目白台にありました、東京大学医学部附属病院分院歯科口腔外科に入局しました。最寄り駅は有楽町線護国寺駅であり、近くの講談社のディスプレイには「ノルウェイの森」が並べられていた、そんな時代でした。この時に、はじめて病棟で、口腔ケアを経験しました。対象は、白血病や肝癌の患者さんなどです。特に、血液疾患の患者さんは、研修医の私と同世代の学生さんたちが多く、何ともいえない理不尽さを感じたものです。たぶん、私の仕事の原点、ルーツはここにあるのだと思います。

 その後、東京大学保健センター、急性期病院の東芝病院、療養型病院の大宮共立病院、大生病院などを経て、現在に至っています。リハビリ病院では、機能障害からの回復が、一番の仕事となります。その一方で、住み慣れた地域である在宅で、リハビリマインドを持って、支えていくためのコミュニティづくりが必要となります。それには、ソーシャルキャピタルの醸成しかないと考えています。

 今回、ソーシャルキャピタルである、「信頼」「規範」「ネットワーク」の構築のために、「全国在宅歯科医療・口腔ケア連絡会」を立ち上げることとなりました。ぜひ、いのへるのみなさまからも、ご支援、ご協力を賜れましたら幸いです。

 知的財産権の視点からは、在宅ケアへのケースメソッドの応用、さらに教育支援ツールとして開発中の「お口の体操アニメーション(β版)」に関して、ご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します。
 
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2010年4月4日日曜日

Medical Innovation in clinical practice: towards an healthy innovation combining technological change and service function

5月10日に下記の要領で寺子屋セミナーを開きます。進展著しい医療機器、そのなかでも特に急激な発展と普及を経てきたCTスキャナやMRIに関するイノベーションは医療サービス・イノベーションにどのような影響を及ぼしてきたのでしょうか?また未来にわたってどのようなインパクトを医療、そして社会に及ぼすのでしょうか?

当該研究分野の第一人者のJerome Galbrun氏から、最新動向を踏まえた報告を共有したうえで議論を深めます。尚、今回はすべて英語で行われます。

セミナー詳細と申し込みはこちらからです。

Outline

Healthcare innovation has been supported by the emergence of new diagnostic tools and treatment procedures, recently triggered by the influence of patient advocacy groups. This presentation elaborates a dynamic view of innovation in medical technology and explains how physicians can contribute to emerging innovations, described as a service innovation function, beyond product development and patents. In Japan, with healthcare costs rising sharply, the benefits offered by advancing technology versus the fiscal cost have become a crucial area of public and policy debate.

When & Where

- 4pm May 10th 2010
- Campus Innovation Center in Tamachi

Speaker Profile

Jerome Galbrun was a senior finance manager in corporations including Hewlett-Packard and General Electric Healthcare. He is a Six Sigma Master Black Belt and has led more than 800 Six Sigma GE projects. He was Marketing Manager for GE Healthcare Europe from 2003 to 2006. As well as various lecturing activities in Tokyo, Mr. Galbrun is currently a researcher and Ph.D. candidate at the Tokyo Institute of Technology. His focus is on innovation processes in medical technology both in Europe and Japan. Mr. Galbrun received a Master from the Graduate Business School of Lyons, France. From 2000-2006, he received education courses from the Harvard Business School and the Wharton Business School.

2010年3月30日火曜日

キックオフ・ミーティング

当初メンバーにてキックオフ・ミーティングを田町のキャンパス・イノベーション・センターにて開きました。

当日は知財関連のバックグラウンドを持つメンバーが中心でしたので、おのずと、特許と先端的な医療サービスをめぐる議論となりました。まず、特許の対象となるか否かについて、モノとサービスに分けると以下のような傾向があります。

(1)医薬、医療機器などのモノ → 特許対象
(2)医薬、医療機器などのモノの製造方法 → 特許対象
(3)人間を手術、治療、診断する方法(サービス)→ 特許対象外

特許法とその運用は、Product-dominantであり、なかなか手術、治療、診断する方法としてのServiceにまでは踏み込まない状況が続いてきました。

このような傾向を、現場よりにまとめてみると、医療機関が外部のベンダーと組んでイノベーションを創発するさいには、主として3つの関係性のパターンがあります。

(1)治療方法の開発 → 医療機関の医師中心 → 医療コミュニティに公開される傾向
(2)医療機器の開発 → 医療機器メーカーとのアライアンス関係 → 特許保護される傾向
(3)創薬に関わる治験 → 製薬メーカー、研究所との受託関係 → 特許保護される傾向

ここでは、(1)の治療方法の開発に絞ります。「医師の行為に係る技術については、『医療』の特質にかんがみ慎重な配慮が必要であり、検討の対象から除外する」(平成16年11月22日報告書4))として、従来の運用である「産業上利用することができる発明」に該当しないと解釈することにより特許対象外とされました。

既存の診断方法、治療方法、看護介入方法などを確定診断名ごとにマトリックス形式で言語化したクリニカルパスは標準的治療方法は、(1)に属し、従来は特許化されず、医療コミュニティで共有されてきました。たとえば、褥瘡治療におけ治癒経過評価手法であるDESIGNは、日本褥瘡学会がリードして作成し、著作権を明示した形で無償で公開されています。

しかしながら、(1)においても従来の手法を一気に陳腐化させてしまうような破壊的な、ディスラプティブ・イノベーションの萌芽になる可能性が期待されるものが出現しつつあります。

たとえば、山中教授がリードしている人工多能性幹細胞(iPS細胞)の出現により、受精卵を利用する胚性幹細胞(ES細胞)で懸念される倫理的問題や拒絶反応等の心配のない画期的な再生医療実現への道が示されました。このような治療方法がからむ再生医療に対して、治療方法が、「産業上利用することができる発明」に該当しないということで特許対象外とするのは好ましくないという議論が浮上してきました。この経緯については、「先端医療分野における特許保護の在り方」に述べられています。

かいつまんで言うと、特許保護がないと、ディスラプティブ・イノベーションの萌芽になると期待される(a)有用な先端的治療方法の開発インセンティブがそがれ、(b)リスクマネーが投資されず、(c)したがって当該プロジェクトの競争力が涵養されず、(d)患者にもより良い治療方法がディフーズしない、という問題が生じます。

そこで2009年6月に、知的財産による競争力強化専門委員より、「先端医療分野における特許保護の在り方について」が提出されています。

この文書では幅広い提言がなされていますが、上記(1)に関連することがらは:

(1)審査基準において特許対象を明確化すべき分野
①組み合わせ物(システム)の発明 
例)物理刺激を用いたDrug Delivery System、つまり、温度応答性機能付加ナノ粒子抗ガン剤と局所加温装置の組み合わせ
  物理手段を用いた再生医療システム、つまり、鉄粉を付着させた細胞と強磁場発生装置の組み合わせ

②生体外で行われる細胞等への処理方法に特徴のある発明
例)iPS細胞の分化誘導方法
  混在している未分化のiPS細胞とその他の分化細胞から神経幹細胞だけを分離・純化する方法

③生体由来材料の用途発明
例)口腔粘膜上皮細胞の培養シートから角膜再生治療向けの用途を開発する
  口腔粘膜上皮細胞の培養シートから食道がん摘出後の閉塞予防治療の用途を開発する

(2)特許対象範囲を見直すべき分野
①専門家の予想を超える効果を示す新用法・用量医薬
②断層画像撮像の仕組み等の測定技術

          ***

以上のように、先端的な医療サービスと知財の関係は激変しています。絶対的な基準がない以上、「専門家の予想を超える効果」を実現する医療機関、研究機関の力量、「専門家の予想を超える効果」を明細書に記述する弁理士の力量、「専門家の予想を超える効果」か否かを審査する当局のせめぎ合いが予想されます。

これらのせめぎ合いが活発になればなるほど、医療サービスにおけるディスラプティブ・イノベーションが進展するのではないでしょか。もっともここでひとつの疑問が浮上します。

せめぎあいは結構なことですが、共通の土俵がなければ、実のあるせめぎあいはできないということです。建設的なせめぎ合い(明確なエビデンスと方法論に依拠する合意形成プロセス)には、サイエンスとしての共通の語彙や方法論が要請されることとなります。ここにおいて知財戦略を含める医療レギュラトリーサイエンスの重要性は増すばかりでしょう。

大学病院などでは産学連携部門、臨床研究センター、知的財産推進センターなどのハコモノが次々と設立されています。これらはあくまでモノですが、モノを機能せしめる方法論としての医療レギュラトリーサイエンス、あるいはそれらしい知的体系が医療をめぐる産学官コミュニティで共有されるべきでしょう。

2010年3月26日金曜日

スーパー特区・先端医療実用化へのロードマップの検討シリーズ

スーパー特区・先端医療実用化へのロードマップの検討シリーズ」の案内です。

医療サービス・イノベーションの視点から有意義な議論が展開されてる模様です。

<以下貼付け>

昨年度まで12回にわたって開催いたしましたTRレッスン&レクチャーシリーズに変わり今年度から「スーパー特区・先端医療実用化へのロードマップの検討シリーズ」を開始いたします。昨年度に、内閣府は先端医療開発特区(スーパー特区)(平成20-24年度)として公募により24課題を選択しました。日本の最先端に位置付けられるこれらの課題のいくつかにつき、その内容、実用化実現の計画、課題等につき話していただき、討論したいと考えています。第2回としまして下記の講演会を開催いたしますので、是非ご参加いただきたくご案内申し上げます。

また、今後のスケジュールにつきましても、以下に予定を記載していますので、ご参照下さい。第3回目以降に関しましても順次ご案内申し上げます。

「スーパー特区・先端医療実用化へのロードマップ」の検討シリーズ第2回講演会 


講師: 浜松医科大学光量子医学研究センターゲノムバイオフォトニクス研究分野 
教授  間賀田 泰寛 先生

課題名:【メディカルフォトニクスを基盤とするシーズの実用化開発】

日時: 4月21日 (水) 18h30~

場所: 東大医科学研究所2号館2階会議室

地図の10番の建物です)

参加費: ¥5,000 (健康医療開発機構会員および学生は無料)

定員: 50名

参加ご希望の方は事務局(sanka@tr-networks.org)までご連絡下さい。
特に申し込み受付のご連絡はいたしませんが、定員になり次第申込を締め切りますので、ご参加いただけない場合には、事務局よりご連絡いたします。

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スーパー特区・先端医療実用化へのロードマップの検討シリーズ

昨年度まで12回に渡り実施してきたTRレッスン&レクチャーシリーズでは、TRに実際に取り組む方々の知見・ノウハウを共有し、具体的なTR推進のイメージを描くという点において一定の成功を収めました。一方、このシリーズの運営、あるいは、ここ数年間のTRを取り巻く状況・意識の変化を通じて、新しい先端的な医療を患者・社会に届けるためには、もう一段階具体的かつ未来指向の視点に切り替えた取組を行うことが必要とされてきていると感じております。昨年度成功裏に実施したシンポジウムの副題を「医療化のロードマップ」としたのも、まさにこのような意識の現れによるものでした。

そこで、今年度は、「TRレッスン&レクチャーシリーズ」に代わり、「先端医療実用化へのロードマップ」を開催し、そこでの議論、検討、あるいは作業を通じて、具体的に近い将来に先端医療を医療化するためのロードマップを描くことの一歩を踏み出したいと考えております。

昨年度に、内閣府は先端医療開発特区(スーパー特区)(平成20-24年度)として公募により24課題を選択しました。本特区では、我が国での優れた基盤研究の速やかな実用化を目指してiPS細胞応用、再生医療、革新的な医療機器の開発、革新的バイオ医薬品の開発、国民保健に重要な治療・診断に用いる医薬品・医療機器の研究開発(がん・循環器疾患・精神神経疾患・難病等の重大疾病領域・希少疾病領域その他)の幅広い5分野での研究課題が選ばれました。

特区選択課題では、公的資金のより柔軟な運用が可能となり、又開発を進めることについて医薬品医療機器総合機構(PMDA)との早期からの話し合いの機会を得ることが可能となります。現在未だ内容が明らかではありませんが、開発に必要な経費についても特別に措置され得ることも期待されています。

選択された24課題に関わる開発研究が次世代医療に貢献できる様なものに発展することは、日本の医学・医療という観点はもとより、経済的観点からも極めて重要と位置付けられています。24採択課題に関わっているNPO会員も多く、本年度は日本の最先端に位置付けられるこれらの課題のいくつかにつき、その内容、実用化実現の計画、課題等につき話していただき、討論したいと考えます。

スケジュール:

1.京都大学 放射線腫瘍学・画像応用治療学 教授  平岡 真寛 先生 【終了いたしました】

3月25日 (木) 18h30~
東大医科学研究所2号館2階会議室
課題名:【イメージング技術が拓く革新的医療機器創出プロジェクト-超早期診断から最先端治療まで】

2.浜松医科大学光量子医学研究センター
ゲノムバイオフォトニクス研究分野 教授  間賀田 泰寛 先生

4月21日 (水) 18h30~
東大医科学研究所2号館2階会議室
課題名:【メディカルフォトニクスを基盤とするシーズの実用化開発】

3. 北海道大学大学院 医学研究科 教授  白土 博樹 先生

5月21日 (金) 18h30~
東大医科学研究所2号館2階会議室
課題名:【「最先端放射線治療技術パッケージング」によるミニマムリスク放射線治療聴き開発イノベーション】

4. 国立循環器病センター研究所副所長  妙中 義之 先生

6月18日 (金) 18h30~
東大医科学研究所2号館2階会議室
課題名:【先端的循環器系治療機器の開発と臨床応用、製品化に関する横断的・総合的研究】

5. 国立長寿医療センタ 室長  中島 美砂子 先生 

7月8日 (木) 18h30~
東大医科学研究所2号館2階会議室
課題名:【歯髄幹細胞を用いた象牙質・歯髄再生による新しいう蝕・歯髄炎治療法の実用化】

<以上貼付け>

2010年3月20日土曜日

本リサーチフォーラムサイト立ち上げました。

本リサーチフォーラムのプラットフォームとして当サイトをたちあげました。
自由闊達な研究と議論のために軽いフットワークで取り組みたいと思います。
よろしくお願いいたします。

2010年3月19日金曜日

自己紹介 松下

フォーラム世話人の松下博宣です。よろしくお願いします。

現在、東京農工大学大学院技術経営研究科にて教育・研究に関与しています。大学院での専攻は、Policy Analysis and Management、副専攻としてSloan Program in Health Services Administrationだったこともあり、米国から帰国以来、社会科学的切り口から医療に関わってきました。技術経営やイノベーションの視点から医療サービスを見るようになってきました。

ガキの頃から体だけはいたって頑丈で、病気らしい病気はしたことがありません。転機が訪れたのは、大学時代の友人とデリーからカトマンズまで自転車大旅行をしたときにマラリアにかかって死にかけたことでした。カトマンズで自転車探検パーティーを解散してからは単独でカラパタール峰(5600m)を登り、下山途中でシェルパ族の子供たちが描いた絵を日本に送ってデパートで展示会を行い、その資金(わずかですが)で村の診療所を修繕するというボランティア活動に関わりました。

上記と前後して、実父ががんにかかり、酸素室のなかでいろいろなチューブに繋がれてウンウン唸っている姿を見て、健康とは?病気とは?と考えるようになりました。

そんなこともあり学部卒業後は、民間企業から病院の経営企画職に転職して病院経営に携わるようになりました。勉強不足を痛感して医療のことをきちんと勉強しようと決意しました。しかし、当時は日本で医療経営学(昔は病院管理学といいましたが)を学べるところがなく、思い切ってアメリカに渡ってCornell Universityで学問に取り組みました。

その後、アメリカのコンサルティング・ファーム、Hay Management Consultantsにて経営コンサルタントを経て、1997年に株式会社ケアブレインズを起業し、2007年に上場企業に売却してイグジットしました。それ以降は、縁あって東京農工大学大学院技術経営研究科を中心としてアカデミア界隈で活動しています。大学院では、ベンチャービジネス戦略論や人的資源管理論を担当しています。また、NPO国際社会起業サポートセンターの理事なども兼任しています。

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